松丘保養園  天地聖一さん(3)

松丘保養園(青森県)
09 /30 2023

早死にのあなたと語る恐山




五指無いが卑下する気持ち捨てて生き




この命素敵な出会い有り難う




天地聖一さんの略歴
松丘保養園 昭和8年11月19日青森県三戸の商家に生れる。太平洋戦争末期に少年時代を送り、家業の塩つくり奉仕。昭和20年長男出征。家業の跡を継ぐ覚悟を決めるが発病。翌21年大火傷を負う。25年6月松丘保養園に入園、15畳間の5人部屋で園生活。治療薬プロミンを受けるも副作用で三叉神経痛や手足の神経痛で重病棟へ。入退室を繰り返すうち、短文芸でも学ぼうと決意。「でこぼこの人生歩む義肢を撫で」とばかり、昭和32年からNHKの通信講座を受講、同時に詩の会「夕星会」に入会し詩歌作法を学ぶ。昭和34年県立弘前高校通信教育を受講、太宰治の研究家・相馬正一に大きな影響を受ける。自身の向学心やさまざまな縁により平成12年、詩歌・短文集『満ち潮』を発刊。2003年3月死去。
 



 

松丘保養園  天地聖一さん(2)

松丘保養園(青森県)
09 /29 2023


餌付けした君の思いを継いでいる





遠い日に葉煙草巻いた指が萎え





底抜けに明るい人の重い過去





郷の秋父母の墓石の風に逢い





人権を叫んで渡る瀬戸の島(邑久長島架橋)





法廃止ああ変わらない差別の目





法廃止生家へ続く道険し





新雪に
たら
汁盛った誕生日





ワープロで刻んだ過去の苦い文字





夢でいい五体が欲しい床に臥す




 

松丘保養園  天地聖一さん(1)

松丘保養園(青森県)
09 /28 2023



花活けて呉れる人あり今日を生き





一人部屋一輪差しに語りかけ





でこぼこの人生歩む義肢を撫で





この虫も生きる権利を這って見せ





海上にネブタが燃えて夏終わる





天の川私を捨てた星流れ





里帰り過ぎた生家を振り返り





今日もまた友の遺品の鈴が鳴り





雪祭りときめく人に歩を合わせ





砂の浜過去を消したい潮が満ち




松丘保養園  山野辺昇月さん(5)

松丘保養園(青森県)
09 /28 2023



 病む妻をいたわる粥の水加減





妻の座に愚痴る妻なく日日虚ろ





逝った妻欲しがった水郷里の水





頼られる視力大事に早寝する





印鑑を逆さまに捺す失意の日





ひと筋の糸にいのちを託す蜘蛛




山野辺昇月さんの略歴
松丘保養園 大正4年2月福島県の農家生れ。16歳暮れから3年間篤農家に奉公。19歳から屋根葺き職人になるため3年間修行し一人立ちしようとした矢先に発病。昭和13年8月松丘保養園に入園。昭和16年療友の勧めで北柳吟社入会し各柳誌や新聞柳壇へ投句を開始。以来30有余年川柳一筋に精進、その句数一万句ほどに及ぶ。昭和21年2月結婚。この頃友人の援助によって孔版印刷で句集『こけの花』50部出版。35年に北柳吟社創立30周年記念の合同句集『浮雲』第二集に採録。38年、愛妻他界。作品はほかに『浮雲』第三集(45年)、『浮雲』第四集(55年)にそれぞれ約35句収録。昭和50年還暦の年に『川柳句集きさらぎ』を出版。 



松丘保養園  山野辺昇月さん(4)

松丘保養園(青森県)
09 /27 2023


 

くすり瓶いのち支えてゆく目盛





代筆の出来る手と目を感謝され





毎日の吹雪を愚痴る津軽弁





ふり向けば後につづくは風ばかり





炊事場の音から療園明けはじめ





面会の子を喜ばす凧を張り





日日萎える五指握りしめ泣くものか





廻れ右したい日もあり闘病記





ほろ酔いの箸をナマコにからかわれ





レントゲン命の芯を覗きこみ






 

あめんぼ通信

水田 祐助 岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在71才、農業歴35年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp
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